<レックナート様の日記2>
太陽暦×××年 ×月 ××日 雷
今日、ルックから私の目について聞かれました。
目をいつも閉じているのにどうして見えているように動けるのか不思議だとか。
私は盲目なので目を開いている必要はありません。
別に何かの修行じゃありませんので床にわざと本を置いておいたりしてくれなくて結構です。寧ろ止めれ。
私の紋章は門の紋章といい、門で空間を抉じ開け様々な場所へ移動が可能です。
これが私のテレポートの原理ですね。
部屋の鍵も関係ないので、天魁星のところに夜這いもお手のもの。
そして、普段はこの門を外界へ向けているのです。
目の代用品として、直接頭へ送るイメージでしょうか。
簡単に言えば心の扉を外へ開け放つ感じです。
……などと言うことを訥々をルックに話したら、もういいですと言われてしまいました。
まあ半分は冗談ですが。
実際は半分は勘と経験、でしょうかね。
何百年も盲目やってればいい加減慣れます。
太陽暦×××年 ×月 ××日 水
生活費が厳しいのでどうにかしてくださいとルックに言われてしまいました。
私達の財布の紐は(かなり前から)ルックが握っているのです。
こんな所に一般人が来るはずがないので、収入源は自ずと限られてきてしまいます。
よって生活が逼迫するのも仕方ないとは思うんですが……やっぱり美味しい物が食べたいですし。
ルックが時々持ってるあからさまに新刊と思われる本の収入源が気になるところですが、本人に聞いたところ教えてくれませんでした。
鼻で笑うなんで酷いですね。昔はあんなにいい子だったのにいつからこうなってしまったのでしょう。
暦を見たらそろそろ赤月からの使者がやってくる時期だったので、当面はそれで凌ごうと思います。
……ああ、星見をして用意をしておかなければ。
あそこは羽振りがいいので気合も入りますね。
太陽暦×××年 ×月 ××日 風
今日クロスがやってきました。
百五十年ぶりだというのに入ってくるなり紋章をちらつかせながら、
「ご褒美頂戴」
などと笑顔でのたまってくれました。
聞いてみれば、宿星を集めて戦ったというのに一人だけご褒美がなかったのに不満だとか。
誰から聞いたのかと聞けば「秘密」との一点張り。
おそらくあの熊か青二才あたりだろう余計な事を。今度紋章絡みの戦いがあったらまた宿星入りさせてやろうか。
百五十年前の褒美なんてとっくに時効だと言っても引く気は全くない様子。
しかも戻して欲しいのが元ソウルイーターの宿主だとか。
彼はすでに紋章の中にいるわけですし、そもそも「一番大切な人」という条件に当てはまらないのですが。
からかい足りないからとかそんな理由で戻せとか理不尽にも程があります。
とにかく、しばらく居座るつもりらしいです。
本人曰く「叶えてくれるまで帰らない」との事ですが……。
……私、いつまで耐えられるでしょうか。
太陽暦×××年 ×月 ××日 火
疲れました。
三ヵ月、自分でもよく耐えたものです。
結局こうなるなら最初からさっさと生き返らせて帰ってもらった方がよかった気もしますが過去は振り返りません。
と、とにかく無事テッドが戻ってきてクロスの機嫌もよくなったようです。
彼の魂の一部分は依然ソウルイーターに囚われたままですが、さすがに完全に取り去るのは無理でしょう。
召喚した時一瞬「なんで生き返らせた」みたいな目で睨まれた気もしますが、気付かなかった事にしておきます。
私だって命は惜しいんです。
でもこれでようやく元の静かな生活に戻れます。
もう二度と来なくていい。
そういえばルックが最近帰ってきていないのですが……?
太陽暦×××年 ×月 ××日 土
ルックが帰ってきたと思ったら、その隣にとても見覚えのある人が立っていました。
私は何のためにテッドを生き返らせたのでしたか。
貴方がからかい足りないと理不尽な要求を突きつけてきたからじゃないんですか。
二人でどこかにいったんじゃなかったんですかクロス!
テッドはグレッグミンスターのソウルイーター現宿主の所へ置いてきたんだとか。
別にいつでも遊びにいけるしと言いながらルックの世話を焼いています。
どうやらルックが気に入ったようでした。
ルックの方は本能で逆らわない方がいいと分かったのでしょう、大人しくしています。
懸命な判断です。
クロスはまたここに住むんだとか。
これでまた私の安穏とした生活は遠ざかっていくのですね……。
太陽暦×××年 ×月 ××日 火
今日シグールとテッドがやってきました。
わざわざこんな辺鄙な所まで来なくてもいいと思うのですが、無下に帰すのも大人気ないですしね……。
手土産としてトランの地酒を1ケース貰ったので一月程度は多めに見ようと思います。
テッドと少しだけ話をする機会がありましたが、彼も苦労しているようでした。
それでもお礼を言った辺り、満更でもなかったのかもしれません。
反転すると面白いかもしれません。