暖炉のついた室内で、ルックは不機嫌そうに足を組んで手を組んだ状態でソファにふんぞり返っていた。
その前に紅茶の入ったカップを置いて、自分の分を手に座ったヒクサクは困ったような笑みを浮かべる。
「ルック、そろそろ機嫌を直してくれないかな?」
「…………」
「クロスも了承してくれていたし、てっきりルックも知ってると思ったんだよ」
自分そっくりな顔に(本当は自分が似ている側だが)こうも自分がしない表情をされると複雑な気分で、ルックは溜息を吐くと組んでいた手を解いて紅茶のカップを手にした。
それを見てヒクサクはにこりと笑みの質を変える。

ルックが自分の誕生日になぜヒクサクと二人きりでヒクサクの執務室にいるのかといえば、全てはクロスとレックナートの仕業だった。
例によって例のごとくパーティの準備をしていたクロスが、今までそんな事を言った事がなかったのに、急に「準備ができるまで出かけててね」と言ったのだ。
今思えばその時点でクロスの企みに気付くべきだった。
いきなりのクロスの言葉に機嫌を損ねかけたルックを有無を言わさずここまでぶっ飛ばしたレックナートも、何枚か噛んでいたのだろう。

そしてその元凶は目の前で底の見えない笑みを浮かべて紅茶を飲んでいるヒクサクだ。
「すまないね。けど、どうしても言いたかったんだよ」
「……ササライはどうしたのさ」
「ササライは一昨日から休暇を取ってるよ。どこか遠出しているんじゃないかな」
「へぇ」
訪ねる相手なんていたのか、と失礼な事を考えながら、ルックは用意された紅茶に口をつける。
珍しい茶葉なのか独特の香りがするが、悪くない。
ルックの感情を読み取るように、ヒクサクは笑顔で言った。
「気に入ったならお土産に持っていくといい」
「……どうも」
「クロスなら私より美味く淹れられるだろうしね」
「…………」
普通国のトップは手ずから茶を淹れたりはしないと思う。
心の中で呟いて、ルックはカップの中身を半分ほどにまで減らしてから、ぼそりと呟いた。
「……別に、あんたの淹れる茶も悪くない」
「ありがとう」

別に、とそっぽを向くルックに緩く笑って、ヒクサクは立ち上がると机の影から大きめの包みを持ってきた。
「誕生日のプレゼントを用意したんだ。受け取ってくれるかな?」
「なに」
にこやかな笑みを浮かべてヒクサクが差し出してきたのは、両手に抱えるほどの箱だった。
綺麗な紙とリボンで飾られたそれは大きさの割には軽い。
「誕生日おめでとう、ルック」
慈しむような笑みを向けられて、ルックは無言で包みを受け取って頷いた。





***
ルックのお相手はヒクサクでした。地雷だと気付いたのは書き出してからでした。
祝うのなんか微妙だよね……。しかしクジで決まった事には仕方がない。
というわけで、こうなるまでの経緯はまたきちんと書きたいと思う。
久々にハルモニア部屋が稼動しそうな予感ー。



(オマケ)

「ルック、おかえり! ヒクサクとは話せた?」
「……もらった」
「へぇ、何が入ってたの?」
「まだ見てない」
「結構大きいよね。何だろう?」
「その割には軽いんだけ……ど……」
「うわぁ、かわいいドレス!」
「…………」
「あ、カード入ってるね。ええと……ぜひ式には呼んでください……。……ルック、この際だから挙げちゃう?」
「誰が! ……今度会った時膾にしてやるっ……!!」