リンゴーン♪ と鐘が鳴る。
それは昼の教会の音であって特別に鳴らされた物ではないものの、何かを祝うために鳴ったようだった。

「な ん で こ う な っ た」
部屋の真ん中にある机に突っ伏していたジョウイに、クロスがほほ笑む。
「皆都合よく各地で用事が入ったんだよ」
「素晴らしい都合もあったもんだっていうか、ねえ!」
「君が「たまには二人きりで誕生日を迎えたい」っていうから叶えてあげたのに」

悪気のない笑みがいっそ腹立たしい。
というか悪気はあるのだ、どう見ても。

「僕は「セノと」二人きりがいいって言ったんだよ!! あんたとのわけないだろ!?」
「くじ引きで僕を選んだジョウイが悪いよ。1/5でアタリだったのに」
「そんな分の悪いことやらせるなよ!」
わかってないねえ、とクロスは言いながら机の上に皿を並べる。
昼食とはいえ誕生日のせいかそれは豪勢だ。
「普段君が受けてる扱いを考えれば、1/5のアタリがあるなんて出血大サービスじゃない?」
「…………………………ソウデスネ」

もはや遠い目で呟くしかなかったジョウイは、自棄っぱちにフォークを食事へと突きたてる。
クロス力作のサラダが美味しい。せめてもの救いだ。
「ちなみにケーキもあるよ☆」
「二人きりでいつものサイズのケーキをどう消費するんだ……」
あれは六人でわいのわいのしつつ、一日ぐだぐだしながら食べきるものだ。
今年は会場の準備はしておいてね、と言われて忘れられていなかった喜びをかみしめつつ、ちょっと高い酒とかも仕入れておいたというのに。

「じゃあこちら、本日の昼食〜ちらしずし☆」
「もろナマモノじゃないか!?」
こんな季節に!? と叫んだジョウイの前に腰をおろして、大丈夫だようとクロスは涼しい顔で手を合わせる。
「いただきます」
「いただ……いやいやいやいや、どうやってここまで運んで来たんだよ。市場で売ってる魚は一部を除いて刺身で食べるようなものじゃ」
「とれたてを水の紋章で凍らせて運んでるから大丈夫☆ 誰も横取りしないからゆっくり味わってね」

簡単に言ったものの、運搬中安定して水の紋章で凍らせておくには、それなりの人数か実力者か技術が必要で。
それでも傷むまでの短い期間にここまで運んでくるには、それなりの財力かコネかそれとも別のルートが必要で。
そう考えると可能なのはシグールの持っている交易路かルックの転移くらいしかない。
「シグールかルックにこんなの仕入れさせるくらいなら……」
「なら?」

クロスの料理は美味しいし、横からかすめ取られることもない。
日頃の疲れをさらに倍増させる毎年恒例の馬鹿騒ぎではなく、静かに一日が過ぎていく。
用意した酒は二人でのんびり空ければいいし、クロスなら美味しいつまみも用意してくれるだろう。
きっと明日はリフレッシュしていつもの日常に戻って行ける。

けど

「……いっそ、毎年みたいにみんなでぎゃあぎゃあ祝ってくれた方がいいよ」

二人は静かで、少しさびしい。
毎年毎年、ぎゃあぎゃあ祝っていた面子がいないのはぽかんと胸に穴が開いた感じすらする。
今日じゃなくても六人集えば騒がしくなるのだろうけど。

「騒がしい誕生日に慣れたって言うか、あれくらいじゃないと物足りないというか」
「じゃあ早く昼ごはん食べようよ」
残しておけるのは残しておいてさ、と続けてさっさとちらしを食べだしたクロスは、きょとんとしているジョウイを見て首を傾げた。
「早く食べてよ」
「あ……うん」
「急いで追加の料理作らなきゃ。今から連絡したら皆夕方には集まるから」
「……そうだね」

さあ、皆で騒がしい夜を楽しもう。





***
今年のコンセプト:ふたりきり
誰を当てるかは誕生日の人の運にかかっています。
ダブりとか考慮しません。容赦なく運だめし。



(オマケ)

シ「やっほーい、来たよ☆」
テ「ジョウイってば俺達がいないといやだとか、甘えん坊だな♪」
ジ「そんな意味で誰が言ったかΣ( ̄□ ̄|||)」
セ「ジョウイー♪ あのね、ルックといっしょにキッシュ焼いたんだよ」
ル「暇だったからね」
ジ「お前、用事は建前にも作っておけよ!! あ、ありがとうセノ」

ク「ちょっとみんな! 来たなら盛りつけと運ぶの手伝って!!」
テ「おっけー。やっぱクロスの料理がねぇとな\( ̄▽ ̄)」
ル「手土産は持ってきたんだろうねヒモ」
テ「ヒモいうなよ! そうら御開帳! 塩豚の燻製!」
ル「わあ、豪華だね…………さすがマクドール家」
シ「まかせて\( ̄▽ ̄)」
ル「で、ヒモは何を持ってきたの?」
テ「だから塩豚の」
ル「それはシグールの家からのでしょ。あんた個人は?」
テ「………………アリマセン」

シ「あー、おっさけだー♪」
ジ「ちょっと奮発したいいやつだから」
テ「酒だー♪」
ジ「あんたにあげる分はないよ! これは酔う人用!!」
ル「じゃあ僕は飲めるね」
ク「僕も飲めるねー」
シ「僕も飲めるねー☆」
セ「楽しみー」
テ「俺だけハブかよΣ( ̄□ ̄|||)」