ジ
「こんばんはー」
セ
「あれ、終わっちゃったんですか?」
ル
「いや、始まってない」
セ
「え、なんでですか?」
ク
「シグールが出張中でいないんだよね」
ジ
「テッドはどこに?」
ク
「テッドは誕生日プレゼント作製中。というかテッドも忘れていたっぽい」
ジ
「なんで二人して忘れるんだ」
ル
「なんでもここ一カ月各地をぶらぶらしてたみたいでね。避暑をかねてグラスランドにまで足を伸ばしてれば日付感覚もあいまいになるよ」
ク
「あの辺りは通常の歴を使わないところもあるもんね」
ジ
「にしてもそろって忘却とかそんな……アホな」
ク
「言ってあげないでジョウイ。テッドが昨日の夜に屋敷に戻ってたのが奇跡だよ」
セ
「でも誕生日もうすぐですよね。テッドさん何を作ってるんですか?」
ル
「マドレーヌ」
ジ
「……思いっきり焼き菓子じゃないか」
ク
「本人もわかってるとは思うけどね。用意してる時間もなかったししょうがないってさ」
セ
「シグールさんはテッドさんからのものならなんでも喜ぶと思うけど」
ル
「テッドが納得しないでしょ、たぶんね」
ジ
「で、肝心のシグールはいつ戻るんだ?」
ク
「緊急の用事があるから戻れって今日の昼に早馬を送ったけど、戻るかどうか」
ル
「間に合うかも不明だよね。まあ日付はまたぐんじゃないかな」
セ
「十九日中に戻るといいですねえ」
ク
「戻らなかったら怒るよ、僕が。手製の料理を無駄にされた、僕が!」
ル
「そしたら詰めて持って帰ろう」
ジ
「わきわき手を動かすなルック、はしたない」
ル
「あんたらに一家の家計を背負っている僕の気持がわかるか」
テ
「できた! クロス、焼き加減チェック!!」
ク
「ん……うん、色良し味良し。上出来!」
セ
「テッドさんお久しぶりですー」
テ
「よぉセノ! 悪ぃちょっと待っててくれ!」
ジ
「僕はスルーか」
テ
「ジョウイの声が聞こえた、俺も疲れてるなぁ」
ジ
「人の声を幻聴扱いするなよ!」
ク
「まあ、これで準備は整ったわけだけど……」
ル
「あとはシグールだね。一体いつ戻ることやら」
セ
「あれ?」
ジ
「どうしたんだいセノ」
セ
「早馬を送ったってことは、居場所はわかってるんですよね」
テ
「そりゃグラスランドぶらぶらとかじゃなくて、れっきとした出張先だからな」
セ
「ルックが迎えに行けばよかったんじゃ?」
全
「「それだ」」
テ
「ルック、行ってくれ」
ル
「やだよ」
ジ
「行けよルック、友達じゃないか」
ル
「違うよ」
セ
「行ってあげてよルック」
ル
「やだよ」
ク
「ルック、僕の料理が無駄になるから行ってきて♪」
ル
「うん、わかった」
全
「「待て」」
テ
「なんで俺らの「お願い」よりクロスの都合なんだ!?」
ジ
「しかもなんだその「うん」って! 僕らには「いやだ」で一刀両断だったくせに!」
テ
「常々思うがお前、俺らとクロスの間に差がありすぎだろ!」
ジ
「その百分の一くらいこっちを思いやれよ!」
ル
「黙れ切り裂き」
テ&ジ
「「死ぬわ!!」」
。○o。゚・*:.。. .。.:*・゜。o○
シ
「みんなごっめ〜ん!」
全
「「ハッピーバースデー!!」」
シ
「かんっぜんに忘れてたよ!」
テ
「安心しろ、俺も屋敷に戻るまで忘れてた」
ジ
「何これボケ? ボケの始まり?」
ル
「毎年やってりゃあそんなもんでしょ」
ジ
「僕はセノの誕生日なんて忘れたことないけどな!」
ク
「はいジョウイはおいといて。ケーキでーす☆」
シ
「わぁいっ♪」
ジ
「ムシデスカ」
ク
「出張先にはとんぼ返り?」
シ
「うん、たぶんね。まだまとまってなくってさー。テッドも一緒に来る?」
テ
「嫌だ。あそこ暑ぃ」
セ
「夏ですもんねー。地下室が一番涼しいって理不尽ですよね」
ジ
「セノ、君姿が見えない時はもしかして……」
セ
「うん、はだしで歩くと気持ちいい」
ジ
「やめてくれ! 汚いし危ないから! 足の裏でも怪我したらどうするんだよ!」
セ
「大丈夫だよー」
ジ
「僕(の心臓)が大丈夫じゃない!」
シ
「クロスのところは涼しそうだよね」
テ
「湖の上だしな」
ク
「あはは、まあそうでもないけどね。うちが涼しいのはルックのおかげです」
ル
「流れの紋章をちょいといじってね。冷えた空気を塔の中に取り込んでるわけ」
四
「「それほしい」」
ル
「……あと魔力の供給エンドレスね」
テ
「無理だ……っつーか面倒だ……」
シ
「うーん、ドワーフが作ってた機械に似たようなのあったけどねえ。奴らの発明って無軌道で天才的すぎて実用化できるのか謎なんだよね……」
テ
「シグール、誕生日くらい仕事のこと忘れていいから」
シ
「あ、ごめん。でもせっかくだし戻ったらテッドにモニターしてもらおうかな」
テ
「わかったから食え食え、なくなっちまうぞ」
シ
「え、喰え? テッドを?」
テ
「…………俺らの間でそれはブラックジョークになるからやめないか」
シ
「じゃあベッドの上で」
テ
「それは裏になるからやめような」
シ
「ぶー」
テ
「ぶーじゃありません」
シ
「相変わらず美味しいなクロスの料理は」
ク
「お褒めに与り光栄です。じゃんじゃん食べてね」
ル
「酒盛りの時間はなさそうだね。一通り食べたら送り届けないと」
セ
「あ、そうですよねー。その前にプレゼントも渡さないと」
シ
「ぶーぶーぶー」
テ
「ブーブー言うな豚かお前は!」
シ
「豚はし、」
テ
「やめんか!」
ク
「……テッドは楽しそうだね」
ジ
「だな」
ル
「ま、いいんじゃない。テッドが楽しければシグールも楽しいよ」
ク
「うん」