また明日なー!とラウロとトビアスと挨拶を交わして部屋へと戻る。

今日は誕生日で、休みだったから昨日からルックに迎えにきてもらって泊まりでお祝いをしてもらったのだ。
セノやシグール達も顔を出してくれて、久々に会えて楽しかったとほこほこしながら部屋に戻った足は、ベッドの脇に置かれた巨大な箱を認めて止まった。

「シグール達の土産か何かか?」
自分の体なんかすっぽり入ってしまうくらいの大きな箱は正直邪魔だ。
ルックが、自分のいない間に転移させたのかもしれないが、中身を出してしまっちゃおうと自分がつけているリボンと同じ色の飾り布を躊躇なく引っ張った。



\ ぱかっ /



「あー……誕生日おめでとーな。俺」
「……誰だ?」
箱から現れた大人の男性に、リーヤはきょとんと目を瞬かせた。





***





「……というわけで、まぁ、二十年くらい後の姿って感じで」
「ふーん」
「驚きが浅い」
「や、だってルックやクロスは数百年生きてるわけだし。なんかこういうこともあるのかなって思うじゃん」
「……ああ、なるほど俺が常識ないのってこうやって培われてたのか」

「それより質問! 質問してもいいんだろ!?」
「いいけどあんまり未来に関わるような話はすんなって言われてるからなんでもじゃないぞ」

「えー……んじゃぁ、次の定期テストの範囲とか」
「二十年も昔のやつなんか覚えてねぇよ。却下」
「シグールが毎日書いてるっていう秘蔵メモの隠し場所」
「それなー……まだ早い」
「なんだよー教えてくれたっていいじゃんか俺のケチ」
「自分ながらもうちょいまともな質問ないのか」


「んー……俺将来何になるんだ?」
「…………」
「セノみたいな王様にはなれないけどさ。シグールの手伝いしてると商売おもしろそーだし、剣使うのもたのしーし。研究はラウロやトビアスについてけねーからなしだけど、あちこち回って色々見るのは楽しーって思うからさ。何やってんのかなって」
「…………」
「見た感じ旅人っぽくねーし。帯剣してっから傭兵か何か?」
「…………」
「おーい」
「……まぁ、傭兵も、した」
「おう?」
「商いにも関われるし、紋章も使う。まぁ、やりたかねぇこともあるけどそこは逃げられねーっていうか……逃げるとラウロこえー」
「ラウロ? あ、ラウロの将来知りてぇっ。あとトビアスも!」
「変わんねぇ。むしろスパルダが増してやがるあの鬼■■――あ、これNGワードか。トビアスも変わってねーかなー……」
「ふぅん」
「何か上機嫌だな」
「べっつにー」

「あ。今のでひとつめとふたつめな。あとひとつ何にするよ」
「なんだろなー……あんまねーや」
「もっと色々聞いてきそうな心構え散々説かれてたのに……」
「だってさー。今が一番楽しいのに未来のこと知ったって面白くねーじゃん」
「…………」
「どーせ重要なこと教えてもらえねーんなら半端に知っても意味ねーしさ。だったら明日の天気とか、そーゆーのでいいや。じゃね?」
「……そうだな」
「未来の俺だってさー、もっと未来の俺がきたら何聞くよ」
「仕事から逃げる方法」

「……未来の俺、どうなってんの」





***





「おい、いつまで寝てるんだ今日は剣の稽古に付き合うはずだろう」
「あー……ラウロ、はよー……」
「相変わらず寝癖酷いぞどうなってるんだその髪」
「……へへ」
「どうした朝っぱらから」
「これからもずーっとよろしくなー!」
「寝ぼけてるのか」
「へへへっ」




***
リーヤ200年後とかそういう問題じゃないよということでゼロをひとつ取りました。
トビアスと仲良くなったちょっと後くらいと、Wの少し前くらい(こき使われ期)くらいで。
リーヤの生涯年表きっちりしているようで後半ふんわりしてるってこれで知った……。

クロス達とのこととかうすぼんやりと不安とかはあるけれど、結局のところ聞いても仕方ないよなっていう刹那的な思考は性格と生まれ両方由来だと思います。