迷い込んだ森の中。
他の仲間と逸れてなぜかフリックとテッドだけになってしまった。

「あのさぁ、実は俺ホモなんだわ」
「…………」
まるで明日の天気の話でもするかのように口にされたテッドの暴露話を、フリックは聞かなかった事にして焚き火の強さの調整をした。
二人の間に沈黙が生まれる。
テッドはフリックに何かを求めるような視線を投げかけてくるが、フリックはひたすら無視することにした。
が、テッドはそれで終わりにするつもりはなかったらしい。

「なぁ、なんかコメントねーの?」
「俺は人の嗜好にとやかく言うようなことはしない」
というかシグールとテッドの関係についてはすでに知っていたので、今更ホモですなんてカミングアウトされたところで驚きも何もない。
「俺、ホモって言ったんだけど」
「だから俺には関係ない」
「本当に?」
「…………」
無言を貫いていると、テッドはにんまりと口角を吊り上げた。
ああ、こいつこういう表情するとシグールそっくりだ。
そういえば昔、シグールも戦争の前は純粋なお坊ちゃんだったんですよとグレミオが言っていたのを思い出す。
そうかこいつが元凶か。

「男同士にはな、ノンケだけどそいつだから好きってパターンと、ホモだから男が好きってパターンに大分されんだ」

「…………」
「で、俺はホモだって今自己申告したわけだよフリック君」
フリックは無言で立ち上がった。
なるほど理解した。
というか理解はしていたが、だからこそあえて聞かなかったフリをしたというのに!

「二人きりの時に言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「いやぁその嫌がる反応がまた楽しいよなぁ」
「来るなー!!」
ぎったんばったん地面の上でもつれあっていると、いきなり茂みが揺れてひょっこりとシグールが顔を見せた。
シグールはテッドの上に覆いかぶさるような格好になっているフリックを見て、それからテッドを見て、ことりと小首を傾げてから言った。
「テッドがフリックで浮気してるーぅ」
「違ぇぇぇぇぇ!!」
「知ってる? 男性が浮気した時ってね、女の人って、本人よりも相手の女性に悪意を向けるんだって☆」
「お前も俺も男だよ!」
「あは☆」
「なんでそんな楽し……ソウルイーターを出すなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「浮気のお仕置きだよ☆」

裁き! と至極楽しそうに紋章を発動させたシグールに、最初から示し合わせてたんじゃねぇのかこいつら、とフリックは吹っ飛びながら思った。