「……我が真なる紋章よ……今こそその真の力を……」
「レックナート様、そっち終わりました……って何してるんですかぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
部屋に入った瞬間、紋章をぶっ放そうとしているレックナートを見つけてクロスは悲鳴に近い声で叫んだ。
同時に駆け出して、レックナートへと体当たりをかます。
二人で床に転がって、舞い上がった埃で咳き込みながら、クロスはレックナートへと怒鳴った。
「何考えてるんですか! 室内で紋章ぶっ放すとか!!」
普段からやっている自分達が言える事ではないが、ここには突っ込む人間はいないのでクロスは更にまくしたてる。
「しかも最大威力とか! そんなことしたら塔ごとふっとびますよ!?」
「だって……」
「なんですか」
「私の紋章って門じゃないですか」
「……そうですね?」
「最大威力を出したら、一気に片付かないかな……と」
「…………」
片付くけれど塵ひとつ残らないんじゃないでしょうか、と喉まででかかった言葉を飲み込んで、クロスは立ち上がった。
服が埃まみれだ。この際だからこの部屋を片付けてしまおうそうしよう。
「わかりました……レックナート様はご自分のお部屋で星見しててください」
「しかし……」
「掃除は僕達でやるんで」
「そうですか? それではよろしくお願いします」
そう言って部屋を出て行こうとするレックナートを寸でのところで止めて服についた埃を払い、改めて送り出してからクロスは盛大に溜息を吐いた。
いくら本人がやる気になっていたからとはいえ、大掃除の手伝いに紋章を持ち出されるとは想像の範疇を超えていた。