じりじりと照りつく太陽の下でシーナとシグールは絶望に打ちひしがれていた。

今年のトランは梅雨が長くて、毎日がうっとうしい湿気との戦いだった。
いい加減嫌気が差してきた頃に酒の席で群島へのバカンスを持ちかけたのはシグールだった。
ちょうどその頃クロスから群島の話を聞いていたので。
『群島に行ったら湿気とはおさらばだよなー』
『群島っつったら南の島だろー? だったら水着のおねーさんとかいっぱいいるんじゃねー?』
『南の島でバカンス……いいね、行こう!』
『おう!』
酒が入っていたとはいえ、計画はとんとん話に進んで、次の日酒が抜けてからもしっかり敢行された。

というわけで観光案内をクロスにお願いしつつ常夏でバカンスー☆と浮かれていた二人は、群島の現実を目の当たりにして心が折れていた。

群島諸国はたしかに暑い。
けれどトランのようにじめじめとした暑さではないからまとわりつく不快感もなく、バカンスの場所としては最適だ。
だがしかし。

「なんでどこにも水着のおねえちゃんいないの……?」
船から見える砂浜には、水着のお姉さんどころか人っ子一人いない。
シグールとシーナが呆然としていると、クロスが簡潔な答えを口にした。
「え、だって危ないじゃない」
「「え?」」
「だってこの辺りの砂浜、モンスターが出るし」
「「…………」」
「バカンスっていうから、てっきり温泉に入りたいのかと……」
「この暑いところにきて更に熱いのに入るの!?」
「けっこう気持ちいいよ?」

結局のところ、群島の日差しは強いので日焼けには向かない上、島によっては砂浜にもモンスターが出たりするのであまり海水浴客はいないのだという。
「普段も結構皆着てるよー? 風通しのいい布を使えば、直射日光に当たるよりもずっと涼しいからね」

「……そんな」
「水着のおねぇさん……」
「僕らの優雅なバカンスが……」
「「嘘だー!!」」
顔を見合わせて叫んだシーナとシグールを、少し離れた日陰から見ていたルックが「あほくさ」と心底呆れた顔で呟いた。