「…………」
「ルック様……」
「しかたがない……クロスと鉢合わせをする可能性を考えるとあまりやりたくはないんだけど……」
「けど、背に腹は変えられません」
固い決意を秘めた瞳で見上げられて、ルックは溜息を吐くと周りに風を発生させた。
「クロスがいたら即座に再転移するから、その心積もりでいるんだよ」
「わかりました」
セラが頷いたとほぼ同時に、二人を風が包む。
転移した先は、懐かしの我が家だった。
「……いないみたいだね」
「ええ……しかも、それなりに長い間不在にされているようですね?」
クロスとルックがそろっていなければ塔は荒れる。
なかなかいい感じに荒れている状態を目の当たりにしてルックは軽く頭痛がしたが、今日は別に掃除をしにきたわけではない。
いや、この調子だとする事になるかもしれないが。
「どこにいるか考えるとあまりいい予感はしないけど……今はとにかく目的を果たそう」
「はい、ルック様」
二人は目的の場所へとまっすぐに進み、そしてそこを見て予想通りの惨状に溜息を吐いた。
「どうしましょう、さすがにここはお掃除しないと……」
「そうだね……」
「せめてお風呂くらいは綺麗にして入りたいです……」
一度は出て行った実家にお風呂に入るためだけに戻ってきた二人だった。