<とんだ勘違い>





人の家のソファに座ってゆっくり本を読んでいると、後ろからするりと腕が回された。
こんな事をするのはセノ以外にいないので、ジョウイは振りほどくでもなく本を膝に置く。
セノがこんな風にしてくるのは甘えてくる時なのは経験から知っていたが、ここは一応シグールの家だ。
二人きりでない時に珍しい。

「セノ、どうしたの?」
笑いを含んだ声で尋ねると、ほんの少しだけ首にからむ腕の力が抜けた。
少し自由になった首を回して後ろを見て、そしてジョウイは音を立てて固まった。
「どうしたのジョウイ」
にこにこと笑いながら至近距離で尋ねられて、ジョウイは声もなくただ首を横に振る。
すでに顔は青い。

シグールはのし、とジョウイにもたれかかって顔を覗き込む。
「ジョウイ、僕お願いがあるんだけどなぁ」
「……離れて、ください」
気力を振り絞り、蚊の鳴くような声でジョウイは言う。

セノだと思っていたのが実はシグールだったという事実についていけていないのか、はたまた今自分の首にかかっているのがシグールの腕という事を恐れているのか。
何も知らない人が見れば、仲のいい恋人同士に見えないわけでもない。
……殺されかけてるとも見える。
少なくとも本人にとっては死の瀬戸際なのかもしれない。


お願い聞いてくれたら離れてあげるよ、と笑顔で言われてジョウイは更に顔を青く……むしろ白い。
「何、ですか」

「脱いでv」
「嫌だ」

本能から即答したジョウイは、次の瞬間後悔していた。
思い切り首を固定されてしまえば逃げ場はない。
この状態ではシグールも強硬手段に出る事はできないのだが、いかんせんこの状況である。
他のメンバーに見られたらたまったものではない。
クロスあたりに見られた日にはしばらくからかい倒されるに決まっている。

逃げ場ないじゃん自分。


「さー潔く脱いでねー」
「いやっ……ぎゃーーーーーーーーーー!!!」





「どうしたの!?」
屋敷中に響き渡る悲鳴に慌てて駆けつけたのはセノだけで、他の四人はシグールの姿が見えないのに気付いていたので、今度は何をされたのかと興味半分で悲鳴の聞こえた部屋に向かった。
そこで見たものは、部屋の隅に蹲って打ちひしがれているジョウイの姿だった。
なぜか上半身裸で。

「これでよしっと」
上機嫌で紙に何かを書きつけているシグールにテッドが尋ねた。
「……シグール、何やったんだ?」
「測定」
「何のために」
「この間、人の背を馬鹿にした」
「いや、してないって」
「だからついでにスリーサイズも測ってみた」
「……さいですか」

男のスリーサイズ測って何が楽しいんだとは聞かないでおいた。
たぶん測定数値よりもその過程を楽しみたかっただけだろうから。





 

 

***
ジョウ坊とかありえないからと言ってみる(欠片もない