<三日後>
部屋に戻ってドアを閉め、テッドは苦笑した。
クロスの気まぐれで戻ってきてから三日。
そろそろいい加減、信じてくれてもいいと思うのだけれど。
「あのな、シグール」
いい加減自分の部屋で寝ろよ。
苦笑半分呆れ半分の言葉に、ベッドの上で自分の枕を抱えてごろごろしているシグールは聞こえないふりをする。
ここはテッドの部屋だ。
自分が死んでからもグレミオは掃除をかかさなかったらしく、マクドール家におけるテッドの居場所はしっかり確保されていた。
壁に自分の絵が遺影よろしく飾ってあったのはさすがに恥ずかしかったのでその日の内に外したが。
自分の部屋に自画像を飾るのはナルシーだけで十分だ。
戻ってきてから三日間、シグールはほとんどテッドの側を離れない。
寝る時もテッドのベッドで一緒に寝る。
最初はシグールの気持ちも分からないでもなかったので好きにさせていたが、三日間一緒にいればそろそろ分かってほしいものなのだが。
「大丈夫だって」
期間限定復活とかそういうのじゃないから。
レックナートとクロスによって戻された自分の存在は紋章に繋がれているので制約は多いが、これからの対応次第でどうとでもなるとも言われた。
シグールの傍から離れられないというのも、別に半径何メートルとかいうちゃっちいものでもないし。
ベッドに腰かけて、わしわしとまだ少し濡れている黒髪を描き回す。
「そろそろ自分の部屋で寝ろよ」
「……やだ、一緒に寝る」
「あーのなぁ」
ふぅ、と溜息を吐いてテッドはどうしたものかと天井を仰ぐ。
戸惑わせている自覚はある。
面倒事だけ押し付けてさっさと紋章の中に入って、ある日ひょっこり現れて。
自分でも相当困るだろうなと思う。
今のこのべったり状態がそれほど困っているわけでも嫌なわけでもない。
この際、シグールの気が済むまで一緒にいてやるべきなんだろうか。
そんな事をぼんやり考えていたら、くいとシャツの裾を引かれた。
見れば、枕をかかえてじっと見上げてくる瞳と視線が合う。
「邪魔なら、いい」
「別に邪魔ってわけじゃ……」
「テッドがもう消えないってのはわかってるもん」
もう二度と勝手に消えないと約束した。
どこにも行かないと言ってくれた。
それは信じるし(前科はこの際棚上げ)そうであればいいと思っている。
「ならなんで」
「……一緒にいたいだけ」
消えるとか、消えないとかそういう心配は一日で終わった。
ただ、今まで共にいられなかった時間を埋めたかった。
これからずっと一緒にいられると思っても、今までの寂しさはどうしようもなくて。
隣にいて、喋って、その姿を見て満足する。
「……でも、まぁ、明日また朝会えるわけだし」
今日からは自分の部屋で寝るよ。
よっこらせ、と体を起こしてシグールは枕を抱えたままベッドを下りた。
おやすみーと言ってドアノブに手をかけたところで、後ろから声がかかる。
「……グール、一緒に寝るか」
振り返ると、ベッドの隣を叩いてにかりと笑うテッドがいた。
***
よくわかんない(待