<ポーカー>





ラスト一枚。
余裕綽々の表情で、カードを表に向けた。


ポーカーしよう。
そう言い出したのはめずらしくルックだった。
理由を尋ねてみれば、先日クロスとサシで勝負し、大敗したらしい――とクロスがふてたルックの代わりに説明した。

「じゃあ二人一組にして脱衣ポーカーね」
「はあっ!?」
思わず問い返したルックに、シグールは笑顔で言ってのけた。

「だからー、二人一組になって片方がゲームして、負けたら連帯責任でもう片方が脱ぐ、と。二回勝ったら一枚着れる。誰かがオーバーになったら終了」
「いいよー」
「…………」
「いいぜ」
「あ、たのしそー」
「ちょっとまてぇ!」

反対したのはジョウイだったので、あっさり無視されゲームが始まる。
もちろんペアはクロス&ルック、ジョウイ&セノ、テッド&シグールだ。
カードを見て、クロスが微笑む。
こう見えても百五十歳、この手のゲームはお手の物。
だがテッドも当然強いはずだから、ここはジョウイに負けてもらおう。

「……今思ったんだけど」
「ん、何、ルック」
「脱ぐのって、僕たちなわけ?」
「そうですねー?」
「当たり前じゃん」

「最後の一枚の良心は残しておかないと、アレが暴走すると思うんだけど」

「うん、最後の一枚はね」

セノの貞操がかかった(かかってないかかってない)ゲームに巻きこまれた現在かなり必死のジョウイは、知らない。
彼が一番、着ている服の枚数が少ない事を。


「じゃあオープン」
テッドの声にクロスとジョウイがカードを開く。
クロス、スリーカード。
ジョウイ、ツーペア。
テッド、フラッシュ。
「はい。テッドの勝ちジョウイの負け」

負けちゃったねーと笑いながらセノがベルトを外した。


次。
「クロスさんの負けテッドさんの勝ち、ですねー」
「……テッド、本当に強いね」
「三百年の実力だ」
「クロス」
「次は勝つってv」

ルックが自分のベルトを取る。



次。
「あー負けたね」
「……わりぃ、シグール」
「いいよべつに」

シグールがバンダナを取り去った。


次。
「はい、二連覇〜ルックベルトどーぞ」
「……ふん」
「……止めないかこのゲーム」
「ジョウイ、自分が負け出すからって止めるのは卑怯だぞぉ?」
「そうだよジョウイ、ダメだよそんなことしちゃ」

ルックがベルトを戻す。
セノがスカーフをほどいた。


次。
「な、ん、で、フォーカードなんか出るんだぁっ!?」
「往生際が悪いぞジョウイ」
「そうだよジョウイ」
「僕は平気だよジョウイ?」
(僕が平気じゃないんだよ!!)

セノが迷った挙句ズボンを脱いだ。


次。
「うそっ、ストレートフラッシュっ!?」
「くそっ、クロスてめぇ」
「あっはっは、勝った勝ったーv」
「……テッド、次負けたら……覚えとけ」
「……わかった」

シグールが腰に巻いていた布を外す。

「……ああ、ジョウイ」
「なんですか」
「セノ、あと二枚だね?」
「っ!?」


次。
「…………」
「チッ負けた……ロイヤルストレートだったのに……テッドなんか憑いてるんじゃない?」
「(お前が言うか)あっぶねぇ……おいジョウイ、平気か?」
「えーっと、これ脱ぐんですよねー」
「まっ、待つんだセノ! 金環! 金環があるから!」
「えーっと、これって服に入ります?」
「……いいよ、入れなよ」
「じゃあこれでー」

セノが金環をはずした。


次。
「二連続勝利、ほいシグール腰布」
「どーも」
「……僕は僕は僕は」
「ええと……」
「セノ、手袋も入れていいから」
「え、いいんですかクロスさん?」
「うん(もうちょっと楽しみたいし)いいよ」

シグールが腰布を元に戻す。
セノが右手の手袋を外した。


次。
「うそっ!? ジョウイそりゃないよっ」
「僅差だけど勝ちは勝ちだ」
「……しみったれた戦いだね、ワンペア争い……」
「テッドさんはストレートなんてすごいですねー」
「じゃあクロスの負けだな」
「……ごめんルック」

ルックがまたベルトを取った。


次。
「かったああああっ!!」
「……クロス、ついてないなお前」
「ブタ……ありえない……」
「・・・クロス、次負けたら覚えときなよ、役立たず」
「すみません……」

ルックが上着(?)を脱ぐ。


次。
「……テッド」
「なんだ」
「勝ちすぎてつまんない」
「……我侭言うな」
「そうだよ我侭言っちゃだめだよシグール、そこで悶絶してる人がいるし」
「あああああああああ」
「大丈夫だよジョウイ、まだ手袋だし」
「今度こそラスト二枚だね?」
「Σ( ̄□ ̄|||) 絶対勝つよセノ!」

セノが手袋を取った。


次。
「……引き分け、だな」
「セ、セーフ……」
「……くそっ」

クロスとジョウイ引き分けにつき、無効。


次。
「はい楽勝ー、エースでフォーカード」
「後一回とっとと勝ってよ」
「……負けた」
「まあ、いいよ僕が一番余裕あるしね? 手袋OKみたいだし」

シグールは腰布を取る。


次。
「もう本当、勘弁してください……」
「なんでジョウイが泣くのー?」
「じゃあジョウイが代わりに脱ぐ?」
「ええ脱ぎますともっ」

ジョウイが腰布をほどいた。

「……ジョウイ・セノペアって服の枚数少ないよね」
「シグールとクロスが多いんだろ」


次。
「はい、俺の勝ち」
「……髪紐も数に入れますよ」
「……良心の下着は残すとすると、セノがあと一枚脱げばゲームが終わるってわかってるよねジョウイ」
「わかってますとも」
「ジョウイ、僕寒くないから脱いでもいいよ?」
「絶対、だめ」

シグールが腰布を元に戻す。
ジョウイが髪紐をほどいた。


次。
「当然僕の手袋も数に入ります」
「……ここまで来ると意地なんだな……」
「呑気にしてるけどねクロス、アンタ次負けたら切り刻むよ?」
「負けてないもん」
「勝ってもないね」
「テッド、代わって」
「……いいけど、いいのか? 負けたらお前が脱ぐって事だぞ?」
「うん」

ジョウイが手袋を取る。
シグールとテッドが交代した。


次。
「はいやっと二回目勝ちました、どうぞルック」
「一回負けたら無効なんだなこの勝ち数……」
「ええっ!?」
「……いいよ、ジョウイは情けね、あと一回勝てればの話だけど」
「シグールさん強いんですねえ」
「だって僕、テッドが鍛えたもん」

ルックが上着を直した。
ジョウイが上着を脱ぐ。


次。
「あ−……負けた、クロス強いや」
「……凄まじい接戦だったな」
「凄いですねー、なんてストレートとかそんなにでるんですか?」
((全員イカサマしてるからなあ))

シグールが手袋を取る。


次。
「はーい、ジョウイの負けー」
「…………」
「究極の二択だな、ジョウイのズボンかセノの服か」
「僕としてはジョウイのズボン。セノの服脱がしたら終わっちゃう」
真顔で本音を述べたクロス。
テッドとシグールも間髪いれずに同意する。
ルックも、涼しげな視線を向けて言ってきた。
「僕は、少しアンタ気を使うべきだと思うけど?」
その言葉はジョウイに向けられていて。

ジョウイがズボンを脱いだ。
なお、武士の情けで上着を膝の上にかけることを許された。
(ってゆーか誰もジョウイの下着姿なんて見たくないし byシグール)


次。
「二連覇、というわけで僕はバンダナを返してもらおう」
「……ジョウイ、生きてるか?」
「ゲームオーバ……だね」
「ええっと、僕は脱いだ方がいいんですか?」
「まあ一応ゲームだし、寒いかもしれないからすぐに着ていいよ」
「はーい、じゃあ脱ぎまーす」
「だめだだめだだめだ! セノの綺麗な肌は僕だけのも……がふっ」
ジョウイに向かって見事なフックを喰らわせたセノは、崩れ落ちる彼を一瞥もせずに、笑顔でテッドとシグールに頼んだ。

「この産業廃棄物、二階に運んでもらっていいですか?」
 

 


 



***
結論
「……僕は誓う、二度と脱衣ポーカーなんてしない」
「危なかったねルック、君残り二枚までいったもんね」
「というかなんでジョウイがあんなに負けるんだ」
「……作者曰く、勝敗はくじ引きで決めたらしいけど、テッドがいた時はテッド:僕:ジョウイでの勝率は3:2:1。
敗率は1:1:2だったらしいけど、シグールと入替ってから2:2:1と1:1:1のはずだから……」
「そんなに不利じゃないはず、だね」
「……ま、そうなんだけど、そうだからこそジョウイっていうか……」
(1/6の確率で勝てるのに、なんで二十戦もやって一回しか勝ててないんだろう)