<just the world of you and me>





ごろごろーと転がりながら、抱き枕を抱きしめたシグールは口を尖らせる。
ベッドの横にランプを置いて、本を読んでいるテッドはベッド上を転がることによって生じる振動など全く気にしていない。
「テーッドォ」
「ん」
「本やめてよー」
「ん」
「テ、ッ、ドッ!!」
ばしばしと抱き枕でテッドを叩くも、全くの無反応である。

「テッドのバカ」
ぶすくれてテッドに背を向けうずくまったシグールの横から、小波のような笑い声が聞こえてくる。
からかわれた、とわかって一気に頭に血が上った。
「もぉーっ!!」
「あっはっはっは、悪ぃ悪ぃ」
バンダナを取った髪をわしわし掻き混ぜられ、シグールは目を瞑って頭を振る。
父親の仕事の都合で一行にくっついてきた二人だったが、さすがに部屋数が厳しいとの事で同室である。
別にわざわざシグールとテッドが同室の同じベッドになる必要はなかったのだが、シグールがたまにはこんなのもいいなあと言ったので決定となった。

「じゃあ寝るか」
「え」
あまりにもあっさりとそう言って本を閉じランプを消したテッドに、シグールは開いた口が塞がらない。
「えって」
「もっと話すっ!」
「話すって……朝早いんだぞ?」
「いいもん、テッド起こしてくれるでしょ?」
ね、ね、話そう?
こんな遅くまで二人でいる事は滅多にないから、興奮して眠れない。
護衛はドアの外だし、部屋には本当にテッドとシグールしかいないのだ。
「話すって……何を」
「…………」
「……寝ような」
「やだっ」
がばりと起き上がって、ベッドを軽く揺らしつつ、頬を膨らませているであろうシグールを暗闇の中に想像しテッドは微笑む。

もっともシグールはそんな余裕はなかったわけで、いやだーともう一度繰り返したが、話題がさりとて見つかるわけでもない、特にこんな夜中に話しそうな話題は。
「じゃあテッドの話して?」
「俺の?」
「うん、僕テッドの事もっと知りたいから。まだ知り合って一年くらいしか経ってないけどさ、ずっと前からの親友みたいな気がするんだ」
いいでしょ? と言われてテッドは唇をほころばせると、僅かな明りと勘を頼りにシグールの腕を掴んで布団の中に引きずり込んだ。

「特にないけどなー……ああ、聞きたいことは?」
「えーっとねぇ……好きな色は赤でしょー、食べ物はマグロでしょー、趣味は読書でしょー……」

指折り数えているだろうシグールの肩に布団をかけ、上から規則的にそっとたたく。
口の中でもごもごと数えているシグールの声がだんだんと小さくなり、そして止んだ。

「ごめんな、シグール」

囁いたその言葉は、彼に届く事はなかったけど。

「きっとあと、少しだけど――……おやすみ」


――今だけは、君の側に。



 

 

 

 


***
かわいかった(テッド談)ころの坊ちゃんとテッド。
微妙にセノにかぶってるなぁとか無邪気なルックってこんなんかなぁとか。
別人だと割り切れば平気です、たぶん。

……ごめんなさい(明後日の方向へ謝罪